ツンデレ爺さん萌え映画――『グラン・トリノ』

ツンデレ爺さん萌え映画として素晴らしかった。ツンデレとか言うの良くない? まあいいじゃん。要は観ていてどんどん爺さんに対する印象が変わってくるのが良かったってことです。序盤は連れ添いを亡くして犬と孤独に暮らす偏屈爺さんの話として『イノセンス』を連想したりもしたが、その後の展開のなんと対照的なことよ。つまり『イノセンス』はバトーがハードボイルドに見せかけてひたすらヘタレかつ変態で、まあそこは評価できる作品だったが、『グラン・トリノ』は爺さんがどんどんかわいく、そしてさらに格好良く見えるようになっていく作品。
ストーリー的には『グラン・トリノ』は良い話として普通に泣けてしまったのでそれ以上あんま言うことはないかもしれないなあ。イーストウッド監督作品は『ミスティック・リバー』くらいしか観てないが、ラストに関してだけ言えばあっちの方が後味の悪さがあって、しかもその後味の悪さがテーマ的に必然だったので良かったかな。キネ旬小林信彦×芝山幹郎対談読んだ感じ、それまでのイーストウッド作品を観てる人にとっては『グラン・トリノ』のラストがやたら感慨深いみたいだけど。


ああそういや爺さんと隣の家の婆さんとのコミュニケーションとか良かったね。
爺さんと婆さんは仲が悪くてよくお互いの家のテラスで睨み合ってるんだけれど、一度爺さんが婆さんの家に招かれたとき、言葉は通じないけど婆さんが爺さんに対してなんかガミガミ言ってて、

婆さん「ガミガミ」
女の子「歓迎すると言ってます」
爺さん「嘘つけ」
女の子「やっぱりわかっちゃうか」

てなシーンがあったけど、終盤では

婆さん「ガミガミ」
爺さん「ああ、俺も愛してるよ」

というシーンがあって、これが何とも良かった。言葉が通じないにもかかわらず〜という話じゃなくて、単純に二人とも可愛いなあと。ずっと変わらずガミガミ言い続ける婆さんも、最初頑なだった心を徐々に開いていった爺さんも。