そういえば「なんで東なんかに騙されたの? 若気の至り?」みたいなことを誰かに聞かれてた気がするので答えておこう。
一言で言えば『存在論的、郵便的』という本に魅了されたから。特に騙されたとは感じていない。とはいえ、それはその頃の僕が柄谷その他の現代思想系の本を一切読んだことがなかったことが原因として大きい。僕が惹かれたものの半分は柄谷の思考だっただろう。実際、後で『内省と遡行』などの著作を読んだとき、「なんだ、こんな元ネタがあったのか」と幻想殺しされていくらかの失望感を感じた。柄谷本人の著作はすいすい理解できてしまうがゆえに『存在論的〜』ほどの魅力は感じられなかったし。
それでも幸せな出会いだったと言えるかもしれない。一文一文立ち止まりながら精読していく実に楽しい経験だったので。断続的に1年以上読み続けたかな。